早期胃がんに対する新しい内視鏡治療

―内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)についてー

             消化器病センター  消化器内科 科長 渕崎 宇一郎


 
早期のがんは内視鏡的に切除できることをご存知でしょうか。早期胃がんの中でも、胃の内側の粘膜にとどまるがんは内視鏡治療により完全に治ります。最近、内視鏡治療の進歩により、従来の方法では切除困難であった病変を確実に治療することが可能となりました。
 今回は、この早期胃がんに対する新しい治療法についてご紹介いたします。
 従来は、がん組織の根元にワイヤーをかけ、高周波電流により焼き切る方法
(内視鏡的粘膜切除術:
EMR)が一般的でした(図1)。

図1

<局注する>

<ループで捕える>

<通電する>

しかし、この方法では2cmを超えるがんの場合は、がんを数回に分けて切り取る「分割切除」となり、病変を一括して切除することが出来ないため、切り取った組織の病理学的評価が難しく、取り残しが出る危険性が指摘されていました。
  近年、
ITナイフ、 フレックスナイフ、フックナイフなどの内視鏡治療処置具の進歩はめざましく(図2)、これにより内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection: ESD)という新しい内視鏡治療が可能となりました(図3)
図2

<ITナイフ>

<フレックスナイフ>

 

<フックナイフ>

 

図3.ESD模式図

Yahagi. Digestive Endoscopy. 2004より)

内視鏡的粘膜下層剥離術の実際
1)がん病変を確認、病変部に色素撒布し十分な観察後、切除範囲をマーキング(2)周囲を局注しプレカット(ITナイフを入れる小さな孔を作成)(3)マーキングした部の外周を全周切開(4)粘膜下に局注液を注入して病変部を盛り上げ、その粘膜下層を剥離して切除し、最後に切除した粘膜を回収して、病理組織学的に検索します(図4)。
  この方法により、病変を一括して切除出来るため確実な内視鏡治療が可能となりました。
  しかし、従来の方法に比べて治療時間が長く、出血や穿孔といった合併症の頻度が高いのも事実であり、いまだ全国の病院での標準治療には至っていないのが現状です。
  当院では平成
16年よりこの治療法を導入し、現在のところ重大な合併症は起きていません。消化器病センターとして消化器内科医と外科医が一緒に診断・治療にあたっており、合併症に対しても十分な対策のうえに施行しています。
  早期胃がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術は確実な内視鏡治療であり、胃を温存することができることから、特にご高齢の患者様にとっては大きなメリットになり、今後普及していく治療法と考えられます。

図4

<がん病変を十分に観察>

<色素撒布>

<マーキング>

<全周切開>

<粘膜下層剥離>

<摘出標本>

 

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